自己破産しても免責にならない!?債権よりも強力な非免責債権とは?
免責許可決定を得ても、例外的に免責されないお金(支払い)というものがあります。
これが、「非免責債権」と呼ばれるものであり、破産法にその規定が細かく記載されています。
ここでは総括に意味も含めて、それらの非免責債権の主なものを紹介し、免責されない債権とはいかなるものなのか?その対策なども含めて考察していきたいと思います。
7種類ある非免責債権とは?
自己破産をしても免責にならない非免責債権の中でも確実になくならない債権として有名なものが「税金」です。
税金は、日本国民である以上、憲法に納税、つまり税金を納めることが義務として定められているのです。
日本国民である以上、税金を納めなかったり、税金の支払額を誤魔化して納めたりすることは犯罪行為となります。
税金は、たとえ免責許可を受けても、免責されない、つまりチャラにはならないということです。
その他にも損害賠償請求権はなくなりません。
以下に挙げる主な税金は、免責許可の対象とはなりません。
a.租税等の請求権
所得税
相続税
贈与税法人税
住民税
固定資産税
自動車税
社会保険料
国民健康保険
国民年金保険
厚生年金保険
といったものが、免責されない租税(税金)というものに該当します。
いずれも、馴染みのある税金や保険ではないでしょうか?
この他にも、公立の保育園、私立でも許可保育園の保育料は、税金の中でも地方税の徴収の範疇にあるので、これに準じて該当します。
また、水道のうち、下水道使用料も税金のうちの地方税の徴収の範疇なので、これも該当します。
これらはすべて、免責されない税金ということになります。
b.悪意で加えた不法行為の損害賠償請求権
この場合の「悪意」の解釈が問題となりますが、この「悪意」とは、あくまでも法律上の「悪意」のことを指します。
例を挙げれば、「わき見運転がもとで引き起こされた交通事故(不法行為)の損害賠償」や、「不倫などの不貞行員が原因の離婚の慰謝料」などの不法行為における解釈は、悪意で加えた不法行為とは言えない、という解釈であり、そのため、免責の対象となります。
一方で、詐欺行為や暴力行為などは悪意で加えた不法行為であると見なされるため、非免責債権となり、支払い義務は残ります。
裁判所に、免責許可を受けることはできません。
相手をおとしいれるためにわざと相手に危害を加える行為についての損害賠償請求権は、非免責債権にならないのは、当然といえば当然ではないでしょうか。
c.故意や重大な過失により心身を害した損害賠償請求権
不注意によるわき見運転などの交通事故と違い、飲酒運転での死亡事故など危険運転致死傷罪の成立が該当するような悪質極まりない交通事故などは、重大な過失があると見なされ、非免責債権になります。
すなわち、これも免責許可を受けることはできません。
また、離婚の慰謝料に関しても、不貞行為が原因で離婚に至った場合などとは違い、パートナーの家庭内暴力(DV)といった、生命や身体を害する不法行為が原因の離婚の慰謝料は、非免責債権になります。
この場合に関しても、免責許可を受けることはできません。
d.民法に掲げる義務における請求権
破産法においては、以下に掲げる民法の定義による請求権を「非免責債権」と規定しています。
つまり、「免責許可を受けることのできない債権」という意味です。
・夫婦間の協力及び扶助の義務
具体例としては、夫婦のうちの収入の多い方が勝手にパートナーに相談もなく家を出て行ってしまったケースなどでは、もう一方は生活費などを請求することができるというものです。
・婚姻から生ずる費用の分担の義務
夫が収入を得ているのに、生活費を妻に全く渡してくれないケースなどが該当します。
この場合、妻には正当な金額の結婚から離婚までの婚姻費用を請求できる権利があります。
・子の監護に関する義務
離婚が原因で子供と暮らせなくなっても、結婚していた時代と同等の生活を保障しなくてはいけないという義務です。
つまり離婚後も、相当額の養育費を支払い義務がある、ということです。
・扶養の義務(民法第877→880条)
三親等内の親族に経済力が無く、裁判所に「扶養義務者」と認定された場合には、三親等内の親族には扶養義務が生じるということです。
・上記の義務に類する義務で契約に基づくもの
家族や夫婦の扶養以外のケースであっても、類似している契約に基づくものは、非免責債権になるというものです。
免責許可を受けることはできなくなります。
e.雇用関係で生じた請求権や返還請求権
経営者や事業主が自己破産した場合、従業員に支払うべきである給料、退職金、従業員から預かっている積立金などは、すべて非免責債権になります。
この場合にも、免責許可は受けられません。
f.故意に債権者名簿に記載しなかった請求権
裁判所に自己破産の申し立てを行うと、破産手続きのプロセスで債権者一覧表に、お金を借りている債権者はすべて記載して申告する必要があります。
債権者一覧表に記載された債権者は、幾度か意見を言う機会を与えられるのですが、債権者一覧表に記載が無ければ、その債権者は一度も自分の意見や言い分を言えないまま、その債権が免責されてしまうことになるのです。
このため、故意に債権者名簿に名前を記載しなかったり、うっかり忘れていた過失によって記載しなかった債権については、免責されません。
非免責債権となってしまうのです。
また、この場合には債権の隠ぺいとして発覚したりすれば、免責不許可事由に該当し、免責許可自体が下りなくなりますので十分な注意が必要です。
g.罰金等の請求権
これらの反則金は、刑罰であるので、自己破産して免責許可決定を得ていても関係なく支払わなくてはなりません。
免責はされません。
罰金
刑罰として取り立てられる金額が、10000円を超えるものの場合
科料
刑罰として取り立てられる金額が、10000円未満のものの場合
刑事訴訟費用
刑事裁判にかかる費用のこと
追徴金
犯罪に関するものを没収されるのと引き換えに支払うお金のこと
過料
刑事以外で取り立てられる種類の罰則金
これらの罰則金や費用に関しても、免責許可を受けることはできません。
まとめ
以上のように、あなたが、自己破産が認められて免責許可決定を得ても、非免責債権は支払う義務が残ります。
主に、免責されない債権というのは、公共性のある税金などが中心です。
とはいっても、借金地獄の主因であった多くの金融機関や貸金業者から借りていた借金は、免責許可によって返済義務を免責されたわけです。
いくらお金が無いといっても、にっちもさっちもいかない絶望的な借金地獄状態からは救済されたわけですから、非免責債権は必死になって、支払っていく姿勢を見せてもらいたいものです。
借金地獄の原因の債務はほぼ全て免責許可によって、借金の返済を免責、つまりチャラにされたわけですからね。
多くの税金関係については、日本国憲法に定められた日本国民の三大義務の一つである納税なので、逃れることはできません。
日本国民である以上は、何人たりとも、税金と名の付くものは納めなくてはなりません。
税金が、免責なんてことになれば、真面目に税金を納めている他の日本国民が馬鹿を見ることになり、あってはならないわけです。
税金は国家を維持し運営するために欠かせないお金であり、国民が税金を納めているからこそ、国家が存続できているわけですから。
税金の支払いが苦しければ、該当する役所などへ行って、正直に率直にあなたの現状を話してまずはわかってもらいましょう。
苦しい事情を理解してもらえれば、税金の納付方法について、それなりの柔軟な方策を取ってもらえる場合がほとんどです。
税金というのは、国民の義務として必ず納めなければならないものですが、その税金の種類によって、該当する役所などに相談すれば、税金納付の猶予や、税金支払い方法の変更などフレキシブルに対応してもらうのは可能なんです。
支払っても生活に支障がない額の税金の配分を決めて、税金を分割支払いにすることもできます。
また、この非免責債権の中で、特に気を付けなくてはいけないのが、「f.故意に債権者名簿に記載しなかった請求権」です。
これは、記載しなかった分の、債権(借金)がそのまま免責されずに残るだけではなく、このことが発覚すれば、破産手続きにおいて「免責不許可事由」に該当することとなり、最悪、免責許可自体が下りなくなるリスクが高まります。
十分に気を付けなくてはいけないでしょう。
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