自己破産者は破産者名簿に記録が残るってホント??
よくこんな噂を聞かないでしょうか?
「自己破産すると破産者名簿に名前が記録されて、近所や会社にバレるらしい」
まことしやかに言われてますよね。
実際に、自己破産すると、自己破産者を記した名簿に名前と記録が残ってしまうのでしょうか??
ここでは以下で、そんな自己破産者と破産者名簿について考えてきたいと思います。
破産者名簿とはそもそもなに??
多重債務者などが自力での借金返済が不可能だと判断した場合には、管轄の地方裁判所に自己破産を申し立てて免責許可を受ける事によって借金問題の解決を図ろうとするケースは一般的です。
この際、自己破産を申し立てた債務者の本籍地のある市区町村の役所へ裁判所から通知が行って、自己破産手続きが終結する半年ほどの間は、その役所の名簿に破産者として名前が載ります。
これを一般的に「破産者名簿」と呼んで、自己破産者の名前を記録して保管するわけです。
法律上では、自己破産者として扱われるのは、自己破産を申し立ててから免責許可が下りるまでの期間ですので、この破産者名簿に自己破産者として名前が記録されるのは一般的にはこの期間のみです。
よって、市区町村の役所の破産者名簿に自己破産者として名前が載っても、免責許可を受けると同時に破産者ではなくなるので、記録は抹消されるのです。
免責許可を受ける事ができなかった例外を除けば・・・。
といっても、これも2005年の破産法の改正によって変わりました。
現在は、自己破産を申し立てた人の実に95%の人は、一度も破産者名簿に自己破産者として載ることはありません。
現在、破産者名簿に自己破産者として記録されるのは、破産開始決定を受けた後にも関わらず、免責許可が下りなかった人のみです。
破産者名簿と官報は全然違う!
よく自己破産すると自己破産者として名前が載ってしまう、と言っている人の多くが誤解している情報として、官報があります。
官報というのは、ざっくり言えば「国の広報誌」のようなものであり、国が発行している機関紙です。
自己破産すると、官報には、破産手続きの開始決定のタイミングと、免責許可決定が下りたタイミングの計2回にわたって、自己破産者の名前、住所の記録が公示されます。
もっともこの官報は、書店に売っているような類のものではないので、一般の人が目にすることは、まずありません。
ですから、通常は自己破産者として官報に名前が載ったとしても、近所や会社にそれがバレるということは無いと考えて良いです。
この官報に乗る自己破産者としての情報と、市区町村の役所で管理する破産者名簿をごっちゃにしている人が多いわけです。
両者は全く別物です。
破産者名簿が作られる目的
では、何故官報の自己破産者情報とは別に、市区町村の役所において自己破産者の記録である破産者名簿が必要になるのでしょうか?
それは、破産法上の問題からです。
つまり、自己破産者だと就けない仕事(職業)や、自己破産者がやってはいけないことがあるからです。
例を挙げれば、警備員なども破産法上で、自己破産者の就業を禁止した規定を設けた職種ですが、警備員として就職する場合には、警備会社から自己破産者ではないことを証明する書類の提示を求められます。
この書類のことを、身分証明書といい、市区町村の役所で発行しているのです。
なので、こういった場合に、役所はその身分証明書の請求者が「自己破産者ではない」ことを確認してから、身分証明書を発行しなくてはならないわけです。
そういう経緯で、市区町村の役所に破産者名簿が必要になるわけです。
新破産法でほとんどの自己破産者は破産者名簿に1度も載ることはなくなった!?
旧来は、裁判所に自己破産を申立て、破産手続きを開始して免責許可を受けるまでの期間は、自己破産者なので、裁判所から、債務者の本籍地の市区町村の役所に通知が行き、いちいち破産者名簿に載せていました。
しかし、ほとんどの自己破産者は免責許可を受けた時点で破産者ではなくなるので、そのたびに市区町村の役所では、破産者名簿からいちいち名前を短期間で消さなくてはならず、その仕事は大変でした。
そこで、このようなことはあまり意味がないということで、2005年に破産法が改正されました。
改正された新破産法では、自己破産手続きを行っても免責されなかった場合においてのみ、自己破産者として本籍地の市区町村の役所に通知し、破産者名簿に載せることになりました。
つまり、自己破産の大半のケースである免責許可を受けられる人に関しては、1度も役所の破産者名簿に自己破産者としての情報は載らなくなったわけです。
市区町村の役所の破産者名簿に載ってしまう自己破産者
このように、新破産法では、ほぼ95%の自己破産申立人は、本籍地のある市区町村の役所の破産者名簿には1度も記載されなくて済むようになったわけです。
大半の免責許可を受けられる債務者にとっては、本籍地の役所の人間にも、自己破産した事実を知られること無く自己破産することが可能になっています。
しかし、例外もあります。
改正された新しい破産法においても、役所の破産者名簿に記載されてしまう自己破産者とはどういう人々なのでしょうか??
以下に列挙していきたいと思います。
免責不許可事由に該当し、免責が下りないことが確定した人
破産開始から1ヶ月が経過しているのに、まだ免責手続きが係属していない、または、免責許可申し立てが却下された人
免責許可が取り消された人
上記のようなケースにおいては、裁判所は、本籍地の市区町村の役所に対して自己破産者としての通知を行い、役所では、自己破産者として破産者名簿に記録して管理します。
とはいえ、官報の情報と同じく、一般の人々が、この自己破産者である記録を記した破産者名簿を窺い知ることはできません。
まとめ
破産者名簿のあれこれについて考察してきました。
自己破産者を記した破産者名簿とは、あくまで本籍地の市区町村の役所にあるもので、国が発行する官報の情報とは別物であることがおわかりいただけたのではないかと思います。
更に、2005年の破産法の改正によって、自己破産案件の大半である免責許可を自己破産の成立と同時に受けられるものについては、1度も破産者名簿には載ることがなくなったことも大きいと思います。
例えば、どこかの地方出身者が東京などの現在住んでいる大都会で自己破産する場合に、出身地(本籍地)の役所に自己破産することを知られなくて済むという話ですから。
いくら一般の人に知られることはないといっても、地方の小さな市町村出身者の場合には親類縁者や同級生などが役所に勤めていて、いつバレないとも限りません。
改正された破産法によって、通常通り免責許可を受けられる自己破産者であれば、本籍地の役所へ裁判所からの通知はいちいち行かなくなり、1度も破産者名簿に載せられなくて良いようになりました。