現住所に住んでいない人でも自己破産できるか?
近年では、ホームレスだけではなく、ネットカフェ難民(ネットカフェで長期間に渡って寝泊りしている人)も増えています。
このようないわゆる住所不定も住所を持たない人の中にも、実は借金問題で悩んでいる人も数多いと思います。
このようにホームレスやネットカフェ難民などの多くは、無収入であるか、仮に収入があっても、その日に食べていく分ぐらいしか稼いでないのが現実問題だと思います。
こういった住所を持たない根無し草のような人々が、借金問題を解決するには、どうすべきなのでしょか??
ぱっと思いつくのは、常識的には、とりあえずどこでも良いから就職して身分を確立させ、どこかに部屋を借りて住所を決めてからだと思うでしょう。
通常のケースであれば、多重債務などいっぱいいっぱいの借金を背負ってしまった人の場合には、債務整理の中でも免責許可を受けることのできる自己破産を申し立てることが多いでしょう。
ですが、債務者がネットカフェ難民やホームレスである場合には、簡単に自己破産を考えられません。
その理由は、「住所がない」ということです。
自己破産の申し立てをする場合には、まず、自己破産の申立書を作成して、裁判所に提出しなくてはなりません。
その際の自己破産の申立書には、自己破産申立人の住所を記載しなくてはいけない欄が設けてあります。
おまけに、自己破産が成立した後には、国の広報誌である官報に自己破産者の情報を掲載するのですが、その際に、破産者の氏名ととも住所も公表しなくてはなりません。
このような理由からも、自己破産の申し立てを行うには、まず最低条件として住所が必要となり、住所不定のホームレスやネットカフェ難民は自己破産できないと考えがちです。
では、本当に、ホームレスやネットカフェ難民などの現在住所を持たない債務者は、自己破産できないのでしょうか??
実は、ホームレスやネットカフェ難民のような住所を持たない人でも自己破産する術はあるようなのです。
ここでは以下に、そのような住所不定で多重債務を背負っている人々が、自己破産するにはどうすれば良いのかを考察していきたいと思います。
自己破産には住所登録がなくても、居所があれば可能。
多重債務者など、多額の借金を抱えた債務者が、借金を清算するために債務整理の最終手段である自己破産を選択した場合-。
まず地方裁判所に自己破産を申し立てます。
この自己破産の申し立ての際に、自己破産の申立書というものを作成して提出しなくてはなりません。
そして、この自己破産の申立書には、住所を記載する欄があるために、現在ホームレスになったりネットカフェ難民として日々を送っている人々が自己破産を申し立てることを躊躇するわけです。
しかし、この自己破産申立書の住所、いわゆる「住民票上の住所」に限定されるものではないのです。
実は、現在寝起きをしている場所、つまりホームレスであってもネットカフェ難民であっても、現在寝泊まりしている地点を住所として申立書に記載することも可能なのです。
ホームレスやネットカフェ難民が、現在寝起きしている場所のことを法律的には、「居所」といいます。
そしてこの「居所」を住所として、自己破産申立書に記載して申告しても良いのです。
ただし弁護士や司法書士に依頼することが前提となる
このように、ホームレスやネットカフェ難民のような現在決まった住所を持たない債務者であっても、現在寝起きしている「居所」を住所として、裁判所に自己破産の申し立てを行うことは可能なわけです。
ただし、この場合には、一つ絶対条件が必要になります。
それは、弁護士や司法書士に、自己破産の申し立てを依頼するということです。
その理由は、自己破産の申し立てには、「送達受取人」および「送達場所」を指定する必要があるからです。
裁判所から送達される通知書や郵便物等を受け取る人物のことを送達受取人、それらを受け取る場所のことを送達場所といいます。
そして、送達される書類は郵便物であるため、当然のことながら送達受取人や送達場所は、住所が無ければならないわけです。
このために、裁判所からの郵便物の届く「住所」を持っていないホームレスやネットカフェ難民は、送達することが実際的に不可能になるので、自己破産の申し立てにおいては不適格となってしまいます。
そのため、自己破産を申し立てても裁判所に受理されないわけです。
ですが、弁護士および司法書士に依頼すれば、依頼された弁護士や司法書士の法律事務所の住所を送達場所および送達受取人として指定すれば良いので、裁判所にも自己破産の申し立てが受理されるのです。
「住所」となる場所を確保できる予定があることが必要
このように、ホームレスやネットカフェ難民のような住所不定の債務者が自己破産を申し立てる場合においても、自己破産の申立書には「居所」を住所として記載すれば可能なことがわかりました。
ただし、単にネットカフェや公園などの居所を申請するだけでは、裁判所は郵便物を送達する送達場所や送達受取人が成立しないという理由で、自己破産の申立てを受理しないこともわかりました。
また、住所が無いと生活の再建ができないために、自己破産を成立させても、問題の根本的な解決にはならないと裁判所が考えている理由も加味されます。
また、自己破産の際に、国の広報誌である官報に破産者の公告を出す場合に、「居所」として自己破産申立書では成立したネットカフェや公園などを載せることができないという理由もあります。
そもそも、裁判所の考え方やその在り方として、いくら多重債務者だからといって、公園や駅頭、ネットカフェなどで寝泊まりしている住所不定者に対して無条件に免責許可を与えることはできないでしょう。
必ず、生活再建の意思の確約を取ってから、自己破産を成立させ、免責許可を与える必要性があるわけです。
自己破産の申し立て~自己破産手続きの期間中は、送達受取人や送達場所として弁護士や司法書士を立てるのは良いとしても、それ以降、つまり自己破産が成立してから生活再建場所がネットカフェや公園であってはいけないでしょう。
なので、現在住所を持たないネットカフェ難民やホームレスであっても、自己破産を申し立てる場合には、その後の自己破産が成立してから、生活を再建する再出発場所として、住所となる場所を確保する必要があります。
まとめ
以上、ホームレスやネットカフェ難民などの現在住所を持たない債務者が自己破産する際のおおまかなやり方を考察しました。
このような住所不定の生活を送る債務者は、弁護士や司法書士に依頼するにも相談するにもお金が無い人がほとんどでしょう。
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