家族に内緒で自己破産するためのQ&A
借金地獄に苦しむ多重債務者にとって、自己破産という方策は、またとない救済手段となっているわけなのですが、自己破産をするうえで気になることもあります。
それは多重債務者が自己破産をする上で、自分が自己破産することが、家族や親族などの身内にバレてしまうのではないか?という懸念です。
債務者が夫である場合には妻に、妻である場合には夫に、それぞれ内緒で借金を重ねた結果、債務超過に陥り、借金で身動きが取れなくなってしまったような人も多いわけです。
このような人々の場合には、借金を整理しようと自己破産を申し立てても、夫(妻)や身内にそのことが知られてしまうのではないか?家族に内緒にしていた自分の多重債務がバレてしまうのではないか?気が気ではありませんね。
果たして、家族に内緒で、借金の存在もバレずに自己破産することなどできるのでしょうか??
ここでは、そういった懸念に応えるべく、家族に内緒で自己破産するためのQ&Aといった議題で、少し掘り下げて考察を進めていくことにしましょう。
家族に自己破産がバレる可能性がある場合
現実問題として、家族に内緒で自己破産ができるものでしょうか?
結論から申し上げますと、原則的には、家族に内緒で自己破産を裁判所に申し立てて、自己破産の手続きを進めていくことも可能です。
というのも、自己破産の申し立て→破産手続きというものは、自己破産を申し立てる人個人の借金と財産を清算するもの、という考え方に由来しているからです。
ですから、多重債務者である自己破産の申立て人の借金と財産と、たとえ家族であっても、それ以外の家族の借金と財産とは、「べつもの」として判断され扱われるのが通例です。
基本的な考え方としては、自己破産申立人本人の借金と家族の借金や財産は、「原則として」まったく関係のないものとして判断され、取り扱われるので、家族に内緒のまま、自己破産の手続きを進めることも可能になるわけです。
ですが、これはあくまでも原則としてであって、絶対ではないということも覚えておいてください。
現実の自己破産手続きのケースにおいては、家族に内緒で自己破産手続きを進めることは、実務上の問題で非常に困難なことが多いようです。
では、現実では、いったいどのような場合が、家族に内緒で自己破産することが難しいのでしょうか?
もうちょっと掘り下げて考えていきたいと思います。
家族に自己破産がバレる可能性がある事由
家族に内緒で自己破産を進めていきたいけど、現実には、家族に内緒にしたままで自己破産手続きを続けるのは難しいケースが多いようです。
では、具体的には、どういったケースだと、家族に内緒にしたままでは都合が悪く、バレてしまうのでしょうか?
以下に具体的に詳しく列挙していきましょう。
1.家族が借金の保証人になっている場合
これは問答無用で家族に内緒にすることは不可能なケースですね。
家族を借金の保証人にしてしまっている場合には、自己破産すれば、その保証人になっている家族に借金の請求が来るようになるので、一発でバレます。
この場合には、ハナから家族に内緒で自己破産をしようと考えること自体が間違っています。
2.同居している家族が働いている場合
このケースも家族に内緒のまま自己破産することは極めて難しくなります。
その理由は、自己破産の申立書には、過去3か月分の給与明細を添付することが義務化されています。
そして、この義務化された給与明細は、自己破産を申し立てた本人だけではなく、同居している家族が働いている場合には、その家族の給与明細も提出義務があるからです。
これでは、働いている家族(夫や妻)には最低でも、バレてしまい、家族に内緒で自己破産手続きを進めることは不可能になります。
3.家族が年金をもらっている場合
このケースは、自己破産する本人の高齢の親などと同居している場合が当てはまり、この場合にも、家族に内緒で自己破産することはほぼ不可能です。
同居の家族が年金をもらっている場合には、その年金も収入として判断されるので、同居の家族が働いている場合と同様に、過去3か月分の年金受給証明書を裁判所に提出しなくてはなりません。
したがって、この時点で、家族に内緒で自己破産の手続きを進めることは不可能となります。
4.持ち家の所持、もしくは住宅ローンを組んでいる場合
自宅が持ち家である場合には、換価処分の出来る財産として差し押さえられます。
競売や任意売却などで売却されるのが普通なので、この時点で、家族に内緒で自己破産の手続きを進めることは無理です。
5.自動車を所有している場合
まず、自己破産を申し立てる本人名義の自動車であれば、裁判所によって差押を受けて、売却されてしまうのは当然です。
自己破産申立て人本人名義ではなく、家族名義の自動車の場合であっても、「実質的には自己破産する人の資産」と判断されて、差し押さえを受けて換価処分されるケースも多々あります。
このようなケースにおいても、家族に内緒で自己破産を進めることは難しいでしょう。
6.家族とお金を貸し借りしている場合
家族とはいえ、お金を貸している場合にはそれは資産として見なされ、破産管財人から貸金の弁済を要求されることがあります。
ですから、このケースにおいても、家族に内緒で自己破産手続きを進めるのは難しくなります。
まとめ
以上、多重債務者が借金地獄から逃れて、人生をやり直すために自己破産を決意する場合、家族に内緒で自己破産できるか?否か?という点を考察しました。
結論として、原則的には家族に内緒で自己破産手続きを進めることは可能ですが、ケースバイケースで、家族に内緒にしたまま自己破産することは難しいケースが多いこともわかりましたね。
本来であれば、借金地獄に苦悩して、最後の救済手段として自己破産に縋っているわけですから、債務者が1人で抱え込むより、家族に相談したり、できれば理解と承諾を得て自己破産を申し立てるのがベストだとは思います。
弁護士や司法書士にインタビューしたことがあるのですが、専門家の意見では家族に打ち明けることで、夫婦仲がより深まるケースが多いそうです。
「こんなになるまで借金に悩んでいたのか?」「妻ばかりにお金の管理を任せていて申し訳ない。」など、今までのお金の苦労を一方に任せていたりしていることで申し訳ない気持ちが先に出てくるみたいですね。
しかし、どうしても家族に内緒で自己破産したいという人は、自己破産を依頼する弁護士と綿密で入念な打ち合わせをしたうえで手続きを進めるべきでしょう。