弁護士や司法書士は、なぜ無料診断をするのか?
法律事務所のウェブサイトを見ていると、よく「無料診断受付中」とか「まずは、お気軽に無料診断から!」などといった文言が目に飛び込んでくると思います。
また、役場や市役所などでは、よく『法律の無料診断会実施中』とかありますね?
無料診断会は、相談者にとっては非常にうれしいサービスであり、「無料診断をしてくれるなんて、本当に良心的な法律事務所なんだな!」と、思う債務者も多いかもしれませんね。
はたまた、「役場や市役所で無料診断なんて、タダ働きになるけど、どうやって利益を出してるんだろうか?」とか不思議に感じる相談者(債務者)もいるでしょう。
自己破産を考えているほどの多重債務者は、普通に考えて生活は困窮していて、余分なお金などありません。
なので、法律事務所の相談料でさえ痛い出費になるところへ、「無料診断実施中」という表示を見つけると思わず電話してみたくなるでしょう。
しかし、この無料診断は、なにも法律事務所が慈善事業としてやっているわけではなく、また、絶対に依頼しなければならない事情があるために無料診断を実施しているわけでもありません。
結論から言えば、弁護士や司法書士のいる法律事務所には、無料診断を行うことによって、国からお金を支給してもらえるというような秘密のシステムがあるのです。
ここでは、以下において、自己破産を含む借金問題の解決手段として、なぜ法律事務所は無料診断を行いたがるのか?について、少し掘り下げて考察していきたいと思います。
無料診断することで、実は専門家にもメリットがある!
多重債務などに陥ってしまうと、自己破産などの具体的な債務整理の方策を取っていかないと、借金問題は解決しませんね。
自己破産は、まず管轄の地方裁判所に、自己破産の申し立てを行い、その上で自己破産の手続きを進めて、問題が無ければ自己破産宣告を受けて、同時に免責許可が受けられるというものです。
この一連の自己破産のプロセスは、債務者本人でもできますが、いかんせん法律の素人であるために、そのハードルは高く、膨大な時間と手間暇を要しなければ終わらなくなってしまいます。
また、法律の素人であるがゆえにやり方が間違っていたりすると、最悪の場合、破産宣告だけ受理されて、免責許可は受けられず自己破産後でも借金が丸々残ってしまうなんて泣けない事態も起こったりします。
そのため、一般的には、多重債務者が自己破産する場合には、法律の専門家である弁護士などに依頼するのが普通です。
ですが、自己破産を考えるほどの債務者は経済的に困窮しており、弁護士に依頼する際にかかる弁護士費用や、またその前段階で、法律事務所に自己破産の相談をする際にかかる相談料も痛かったりします。
このようなお金の無い債務者(相談者)にオススメなのが、法テラスです。
法テラスとは、正式には「日本司法支援センター」といい、経済的に困窮したお金のない人でも、法律的な支援が受けられるように設置されている法務省管轄の国の機関です。
この法テラスには、民事法律扶助という制度があります。
民事法律扶助制度とは、定められた一定基準に満たない所得(収入)の人であれば、法テラスにおいて、弁護士費用や司法書士への報酬、および自己破産にかかる裁判所への予納金などの費用を立て替えしてもらえる制度です。
そして、この民事法律扶助制度の一つとして、法律相談援助というものがあるのです。
この法律相談援助とは、法テラスが定めた一定基準の収入に満たない人であれば、1人3回まで、無料診断が受けられるというものです。
この無料診断は、法テラスの無料診断会だけでなく、「法テラスと民事法律扶助契約を結んでいる」弁護士や司法書士のいる法律事務所においても受けることは可能です。
法テラスと契約を結んでいる弁護士や司法書士は、無料診断会を実施することで、後から法テラスに相談料を請求できるシステムになっているわけです。
もちろん、国が相手ですから未払いという概念もないので、無料診断は弁護士や、司法書士にとってもメリットなわけです。
弁護士や司法書士は、法テラスから時給10800円もらえる!
上記で説明したように「法テラスと民事法律扶助契約を結んでいる」弁護士や司法書士のいる法律事務所が、債務者に対して無料診断を行った場合、相談者は無料ですが、弁護士や司法書士は法テラスからお金をもらえるんです。
無料診断という「法律相談援助」を行った弁護士や司法書士は、法テラスに対して申請書を送付すれば、お金が支払われるシステムになっているのです。
その無料診断は30分単位が基本で、支払われるお金は、30分5400円となっています。
無料診断は、30分が基本なので、弁護士や、司法書士は時給に換算すると時給10800円ももらえるんです!
法テラスから支払われているこの相談料は、実は全て「国民の税金」から出ています。
相談者は1円も支払う必要はなく、文字通りの無料診断ですが、相談を受ける弁護士や司法書士は無料診断ではなく、しっかり報酬を税金によって受けているということになります。
ですから、意味なく何回も無料診断をして、国民の税金を無駄にしないように無料診断が受けられる回数は1人3回までと、回数制限が付いています。
実際には「本当に無料診断」を行っている法律事務所もある
前述のように、法律事務所が「無料診断」とうたっていても、実際には、法テラスの法律相談援助制度を利用して、その相談料を法テラスから受け取っているケースも多いんです。
しかし、現実的には、法テラスの法律相談援助の申請を行うと、5400円のお金が支給される代わりに申請書や報告書を作成しなくてはならず、これがなかなか面倒臭いため、法テラスには申請していない法律事務所も多数存在します。
このような法律事務所の無料診断は文字通り本当の意味での無料診断であり、弁護士や司法書士はボランティア(無償)で、相談を受けてあげるということになります。
もちろん、無料診断を受けた中で、納得がいったら依頼してもらうというメリットがあるからこそ、仕事の一貫として無料診断をしているわけですが。
時々、無料診断を行う前提として、依頼することが条件になっているところもありますので、注意が必要です!
無料診断会の裏話
多重債務者が自己破産を実際に法律事務所に相談する場合には、経済的に困窮しているので、無料診断を受けたいですよね?
その点、法テラスの民事法律扶助制度はありがたく、3回までなら無料診断を受けることができます。
その費用も、弁護士、司法書士にとってはタダ働きではなく、申請すれば法テラスから相談料の支払を受けれるということで、債務者(相談者)としても気兼ねなく、無料診断を受けることができるわけです。
多重債務者で、自己破産を考えている人は、臆することなくまずはこの無料診断を受けてみてはどうでしょうか?
但し、気を付けなければならないことが一つあります!
それは、この無料診断では何も解決はしないということです。
無料診断は30分を3回までで、一度に1時間30分の無料診断ができるということではありません。
また、無料診断30分といっても、弁護士や司法書士は相談者の状況を検討する時間も含まれての時間なので、検討する時間も十分ないので、無料診断で正しいアドバイスは期待しないほうがいいと思います。
あくまで無料診断とは、相談した専門家が自分に合う先生なのか、債務整理を得意としているのかを判断するための材料としてだけの利用にしておいた方がいいでしょう。