自己破産したらペットや家畜は取り上げられる?
現代はペットブームがずっと持続している時代で、犬や猫をはじめ、動物をペットとして飼って家族同然に暮らしている人も多数います。
そうしたペットを飼っている人の中でも、生きていく中では色々とあり、やむない事情から色々なところに借金を重ねてしまい、やがてそれが債務超過に陥ってしまうこともあります。
こうなると自力での借金返済がなかなか厳しい状況になり、借金地獄の毎日になってしまうので、法的な解決方法に縋るより他なくなります。
具体的には、自己破産という手段です。
自己破産は、債務整理の中でも最終手段と呼ばれています。
自己破産が成立すれば、ほとんどの場合には、免責許可決定を裁判所から受けることができます。
免責許可というのは、簡単に言うと、合法的に今ある借金全てが帳消しになる、という究極の救済措置です。
この免責許可によって、借金地獄のどん底で喘いで明日への希望を見いだせなかった多重債務者も、また人生を0からリスタートできるチャンスが与えられるわけです。
しかし、この自己破産という最後の手段は、免責許可のような強力な特例措置のメリットがある代わりに、債務者に資産(財産)がある場合には、すべて差し押さえられ没収される決まりです。
債務者が管轄の地方裁判所に、自己破産の申し立てを行うと、債務者が所有する財産の中で、資産価値があると見なされるものは裁判所に差し押さえを受けるのです。
その上で、破産管財人の手によって、それらの資産は換価処分されて債権者に分配されるというシステムになっています。
その資産の中でも、ローンで購入し、ローンの残がある場合には、ローン会社(信販会社)がそれを引き揚げて売却したのち、売却して得た代金とローンの残高を相殺します。
では、債務者が、高価な血統書付きなどの犬や猫などのペットを飼っている状態で自己破産の申し立てをした場合、これらのペットは資産として差し押さえられるのでしょうか??
更に、他の資産同様に、犬や猫などのペットをローンで購入していて、そのローンに残があるケースでは、そのローンを統括しているローン会社などに引き上げられ売却されてしまうのでしょうか??
また、ペットではなくそれが家畜の場合にはどうでしょうか??
資産と見なされて没収され、換価処分されてしまうのでしょうか?
ここでは、以下においてこのようなペットや家畜を所有している債務者が、自己破産した場合にはどうなるのか?について考察を進めていきたいと思います。
犬や猫などのペットは高額な種類でも取り上げられない!
犬や猫などのペットを飼って暮らしている債務者が借金がどうにもならずに自己破産を申し立てる場合、この人の飼っているペットは資産と見なされ没収されてしまうのでしょうか?
結論から言えば、ペットは犬であれ猫であれ爬虫類であれ、資産と見なされて取り上げられることも処分されることもありません。
ペットショップでかなりの高額で販売されていたペットであっても、自己破産の際に没収され競売にかけられるようなことはありませんので安心してください。
これは、動物愛護の観点で扱われる問題であり、ペットは資産ではなく命として裁判所も扱うからです。
実際、飼い主にとってペットは大事な家族の一員でしょう。
ただし中には非常に高額なペットの場合には、資産価値が高いとして処分の対象として見成される場合もごく稀にはあるようです。
例外的なケースです。
しかし、この場合にも、一旦飼われていた犬や猫であれば、買い手が現れにくいため、回収して売却とはならないのが現実のようです。
ローンなどを組んで購入したペットであっても、ローン会社もこうしたペットをいちいち回収することもありません。
牛・豚・鶏を『ペット』として飼うか『家畜』として飼っているかの違い!
犬や猫などのペットは命の問題、動物愛護の観点からも家族の一員と見なされるので、自己破産しても資産として差し押さえられ売却されることはないということはわかりました。
では、ペットではなく、牛・豚・鶏などのいわゆる家畜を飼っている人が自己破産を申し立てた場合には、どうなるのでしょうか?
家畜もペット同様に家族の一員として見なされ資産とは見られないのでしょうか??
純粋に『ペット』であれば取り上げられない
家畜である豚や牛や鶏などの動物を飼っている場合には、その飼い主の「飼い方、および飼う目的」が問題になります。
すなわち、牛、豚、鶏等の一般的には家畜とされている動物であっても、飼い主が純粋に「ペット」として飼っている場合には、これらの一般的には家畜の動物であっても取り上げられません。
では、家畜とペットの境目とは何でしょうか??
その境界線は、その動物を最終的に「処分」する目的で飼っているか?処分を前提とせず、犬や猫のように家族の一員として飼っているか?です。
前者なら、家畜と見なされ、後者はペットと見なされます。
そして、牛・豚・鶏等の一般的には家畜になる動物であってもペットとして飼われていると裁判所に認定された場合には、それらの動物は回収されることはありません。
この場合でも、債権者の一部が勝手に差し押さえて回収し売却して換価処分しようとすることがありますが、債務者が既に自己破産申請していれば、債権者であってもこれらの行為は違法です。
勝手に回収することはできませんので、安心してください。
『家畜』の場合は取り上げられる
牛や豚、鶏などの生物が、「処分」「売却」を前提として飼われている場合には、「家畜」と見なされて、破産管財人に没収されます。
破産管財人は、回収した家畜を資産と同様に換価処分して、債権者に分配します。
ここがペットを飼っている場合と、家畜を買っている場合で大きく違う点です。
家畜と見なされるポイントは前述しましたが、「処分(売却)する前提で飼っている」か否かです。
「家畜」で飼っているものを「ペット」と偽るのはダメ!
以上見てきたように、動物を飼っている債務者が自己破産申請した場合、その動物を「ペット」して飼っている場合には資産とは見なされず回収されないが、「家畜」として飼っている場合には資産と見なされるということがわかりました。
そのため、明らかに「家畜」として動物を飼っている債務者であっても、「これはペットだ!」と偽るケースもあるようです。
養豚場を職業として営み、豚を飼育している債務者が自己破産を申し立て、豚たちのことを家畜ではなくペットとして飼っていると偽るようなケースです。
養鶏場や牧場経営の債務者が自己破産申請した場合でも同様で、ペットとして飼っていることはありえませんし、明らかな虚偽でしょう。
このような場合には、裁判所は当然のことながら「ああそうですか、なら、家畜じゃなくペットですね」とは認めません。
それどころか、悪質な偽証を行ったということで、詐欺罪に問われ訴えられることもあるので、絶対にウソをつくのはやめてください。
観賞用の鯉や爬虫類はどうなるのか?
たとえ、ペットとして飼っていても売ることができる生き物は存在します。
代表的なのが、観賞用の鯉や爬虫類になります。
もちろん、20万円以上の値が付く場合の話ですが、場合によっては没収されてしまう場合もありますので、注意が必要です。
まとめ
自己破産を申し立てた債務者が動物を飼っている際、それがペットであるのか?家畜であるのか?で資産かどうかが分かれることが理解できたと思います。
可愛いペットは自己破産しても手放さなくてもいいわけですが、観賞用の鯉や爬虫類などは高額なものに至っては没収される可能性もあります。
没収される可能性のある観賞用の鯉や高額な爬虫類を飼っている方は借金診断で専門家に相談してみてはどうでしょうか?