自己破産せずに夜逃げすると、借金を免れることができるのか?
生活苦などから、毎月少しづつあちこちから借金するようになると、やがてそれが積もり積もって膨らんでしまうことはよくあります。
自転車操業でも、毎月回して返済していけるうちは良いのですが、債務超過といって、月々の利息の返済させ困難になる状況に陥ってしまいがちです。
そうなってくると、いわゆる借金地獄の状態になってしまい、債権者からの借金支払いの督促や、借金の取り立てなどが激化し始めます。
こうなると、生活や仕事にも支障が出始め、精神的には追い詰められ衰弱してきます。
ですから、せめて借金の取り立てから逃げたい一心で、債務者は思わぬ行動に出たりすることがあります。
その代表的なものが、「夜逃げ」です。
夜逃げは、必要最低限の生活道具だけを持って、突如、債権者が取り立てにこれないように、忽然と姿を消して他の土地に逃げる行為を指します。
『逃げるは恥だが役に立つ』という大ヒットドラマがありましたが、「夜逃げは恥だが役に立つ」ものでしょうか??
まず、夜逃げをすれば、債権者に逃げた場所を特定されない限りは、支払いの督促状が届くことも、借金の取り立てが来ることもなくなります。
ですが、住民票を移すこともできず、身分証を作ったりすることもできなくなるため、そういったものが必要でない特殊な借家などを借りてひっそりと隠れて生活しなくてはならなくなります。
また、そういう身分証もなく住民票も住んでいる住所(夜逃げ先)にないので、仕事もまともな職に正社員などで就くことはまず困難になります。
なので、日雇い労働者などで日銭を稼いでその日暮らしをしていくというような隠遁サバイバル生活を余儀なくされるわけです。
たしかに夜逃げした当初は、あれほどうるさくて精神が安らぐことがなかった借金の取り立てが止んで、一時的には精神的安寧を得られるかもしれません。
しかし、待っているのは、びくびくと債権者に居場所がバレことに怯え、全てにおいて不自由と苦労を強いられる孤独なサバイバル生活です。
「夜逃げは恥だが役に立つ」とはとても言えませんよね。
そこで、このような苦労をせずに、できるだけ正当な方法で、借金地獄から脱出する方法を摸索した方が賢明です。
きちんと借金問題を解決して、借金地獄の泥沼から逃れるためには、債務整理の最終手段である自己破産をする必要があります。
ここでは、夜逃げをしてしまった後でも、つまり夜逃げ中であっても、自己破産を申し立てて破産成立ができるのか?を中心に以下において考察していきたいと思います。
夜逃げをしたら、借金の支払いをしなくても良いのか?
何らかの事情であちこちから借金を重ねてしまい、債務超過の多重債務者になってしまった場合-。
いわゆる借金地獄の状態に落ちてしまいますので、債権者から毎日のように借金返済の督促があったり、借金の取り立てが頻繁に来たりして、債務者の生活はボロボロになります。
こうなってきますと、一般的に借金取り立てから逃げたい、どっかに逃れたい、という気持ちが大きくなり、冷静な判断力が働かなくなるケースもままあります。
通常、債務超過で借金返済が困難になった時点で取るべき方策は、債務整理、ことに、免責許可を受けることができ借金をチャラにできる自己破産の申し立てです。
しかし、毎日のように借金の取り立てに終われ精神的に追い詰められ切羽詰まった債務者の中には、一刻も早く債権者から逃げたいという気持ちが先走る人がいます。
このような人たちは、夜逃げを断行してしまうのです。
夜逃げに成功すると、とりあえずは債権者は債務者がどこへ行方をくらましたかわからないために、借金支払いの督促や、取り立てが止まります。
ですが、夜逃げをしたからといって、債務者の借金の返済義務が消滅するわけではありません。
夜逃げをしても、法律的にも、借金はそのまま残り、その返済義務も免除されるわけではないのでずっと付きまといます。
一般的に夜逃げしてから、銀行や消費者金融、または、クレジットカード会社などから借金している場合には、最終返済日から5年、信用金庫や個人債権者からの借金の場合は、最終返済日から10年経たないと時効は成立しません。
ですから、さいていでもその時効成立の期間が過ぎるまでは、ずっと法律的には借金の返済義務があるということです。
夜逃げをして、新しい住所地でも自己破産はできるのか?
夜逃げをして、逃げた先の新しい住所地でも自己破産ができるのか?という点について考えてみたいと思います。
答は、住民票のある夜逃げした旧住所のある市区町村の管轄の地方裁判所に自己破産の申し立てをすれば、自己破産は可能ということです。
夜逃げした場合、債権者に居所を掴まれないためにも、まず住民票の移動はしません。
ですから、夜逃げに成功して、見知らぬ新しい街で暮らしたとしても、住民票はいつまでも、旧住所の市区町村に置いてあるままなわけです。
通常、自己破産の申し立てをする地方裁判所は、その人の住民票のある場所を基準に管轄とするので、自己破産を決意したら、夜逃げ先から旧住所の管轄の地方裁判所に戻る必要があるわけです。
ただし、夜逃げ中の債務者は、長期に渡って借金の返済をすっぽかして放置しているため、その間に莫大な金額の遅延損害金が生じていて、それが借金の元本に上乗せされているケースがほとんどです。
そういった点もきちんと把握したうえで、相当の勇気と覚悟を持って、裁判所に自己破産の申し立てを行わなくてはなりません。
自己破産は債権者の同意は必要ない
このように、一旦債権者の前から姿をくらまして夜逃げをしていた多重債務者が、自己破産の申し立てと破産手続きを進めるために、また債権者の前に姿を現わしてくれば、そりゃあ債権者は面白くありません。
正直、はらわたの煮えくり返る思いがするはずです。
債務者としても、バツの悪い夜逃げをして、長期間借金返済をすっぽかして放置しているので、自己破産の申し立てに対して、債権者が同意しないことを心配する人が多いわけです。
ところが、法律は、自己破産する場合に債権者の合意を必要とはしていません。
債務者が、裁判所に自己破産を申し立て、破産手続きを進めて、問題が無ければ自己破産が成立し、同時に免責許可を受けることができて、事実上借金を合法的にチャラにできます。
借金の理由や財産(資産)の報告などに関して、法律に定められた「免責不許可事由」に該当しない限りは、免責許可決定を受けることができます。
そして、夜逃げした人が、長期間借金の返済を行わなかったという事由は、この免責不許可事由には該当しません。
よって、夜逃げしている人でも、特に問題もなく自己破産ができるということになります。
まとめ
以上、借金地獄に耐えかねて一旦夜逃げをしてしまった人でも、自己破産はできるのか?という点を中心にして考察をしてきました。
結論は、夜逃げをした後であっても、住民票を残している旧住所の管轄の地方裁判所に破産申立てを行えば、自己破産は可能ということがわかりましたね。
しかし、この場合には念には念を入れて、まずは、借金問題の無料診断を実施している法律事務所で具体的に相談して指針を決めて行った方がより良いと思います。
いずれにしても、夜逃げという手段は現代においては、あまり有効な手段とはとても言えません。
まして夜逃げをするくらいなら、自己破産するほうがメリットが多いと思いませんか?
自己破産によるメリットとデメリットは<トップページ>で詳しく紹介しています。